矯正中に歯が動かない原因は?アンキローシス(骨性癒着)を解説
2026/06/20
こんにちは、港区(三田・赤羽橋)の矯正歯科専門医院、矯正歯科クリニック三田赤羽橋です。
矯正治療において特定の歯だけが計画どおりに動かない場合、その原因の一つとして「アンキローシス(骨性癒着)」が疑われることがあります。
アンキローシスとは、歯と周囲の骨が癒着し、歯根膜という緩衝組織が失われた状態です。
歯が動かないだけでなく、放置すると隣接する歯の傾斜・噛み合わせの悪化・骨の吸収など、さまざまな問題へと発展するリスクがあります。
今回は、アンキローシスの原因や症状、治療法や矯正治療との関係を解説します。
アンキローシス(骨性癒着)とは
アンキローシスとは、歯根と周囲の歯槽骨が融合してしまった状態です。
歯根と骨の間には歯根膜と呼ばれる薄い線維組織があり、これが歯と骨をつないでいることで、歯は噛む力を吸収しながら骨に固定され、矯正力が加わったときには動くことができます。
しかし、アンキローシスではこの歯根膜が部分的または全体的に消失し、歯根の表面と骨が結合した状態になっています。
アンキローシスが起きやすい歯の部位
アンキローシスは特定の歯に起きやすい傾向があります。
乳歯では下顎の第二乳臼歯(奥から2番目の乳歯)、永久歯では外傷を受けた前歯や移植・再植を行った歯に多く発生します。
また生まれつき永久歯がない部位の隣接歯や、長期間にわたって萌出が遅れている歯にも発生することがあります。
アンキローシスの原因
外傷(歯の打撲・脱臼・脱落)
アンキローシスのよくある原因の一つが、外傷です。
転倒・衝突などで歯に強い衝撃が加わると、歯根膜の細胞が損傷を受け、骨組織が歯根表面に付着することでアンキローシスが引き起こされます。
乳歯の晩期残存
自然に脱落するはずの乳歯が、永久歯の萌出遅延や先天性欠如などの理由で長期間残存すると、乳歯の歯根と周囲の骨が癒着してアンキローシスを起こすことがあります。
乳歯のアンキローシスは、周囲の歯の萌出・成長によって隣接する歯が高くなるにつれて、相対的に沈み込んだように見えることが特徴です。
放置すると隣の歯が傾斜してスペースを侵食し、永久歯の萌出スペースが失われるリスクがあります。
歯の移植・再植処置後
歯の移植や再植の後は、アンキローシスが発生するリスクが比較的高いとされています。
これは処置の過程で歯根膜細胞が損傷を受けやすいためです。
慢性的な炎症(歯周病・根尖性歯周炎)
歯周病や根の先端に生じる慢性的な炎症(根尖性歯周炎)が長期間にわたって続くと、歯根膜が炎症によって破壊され、歯根と骨が癒着することがあります。
虫歯や歯周病を早期に治療して慢性的な炎症を起こさないことが、アンキローシスの予防という観点からも重要です。
特発性(原因不明)のアンキローシス
外傷歴や炎症歴が明確でないにもかかわらずアンキローシスが発生する「特発性アンキローシス」もあります。
遺伝的な素因・局所的な骨代謝の異常・歯根膜の脆弱性などが関与している可能性が示唆されていますが、明確な理由はまだ解明されていません。
アンキローシスが矯正治療に与える影響
計画どおりに歯が動かない
アンキローシスを起こした歯は矯正力に反応せず、力を加えても動きません。
これにより、治療計画で想定していた歯の移動が行われず、治療期間の延長・治療計画の修正が必要になることがあります。
隣接する歯への悪影響
アンキローシスの歯が動かない状態でワイヤーに力を加え続けると、その力が隣接する健康な歯に集中します。
その結果、隣の歯が意図しない方向へ動いたり、傾斜したりすることがあります。
顎骨の成長への影響
成長期の子どもでは、アンキローシスを起こした歯が顎骨の正常な垂直成長の妨げとなることがあります。
周囲の骨と歯が成長・萌出するなかで、アンキローシスの歯だけが成長に追従できず相対的に沈み込んでいくため、局所的な骨の発育不全や歯列の段差が生じます。
アンキローシスへの対処法と治療の選択肢
経過観察(軽度・進行が遅いケース)
アンキローシスの程度が軽く、現時点で歯列や咬合への影響が小さい場合は、定期的な経過観察を選択します。
特に成人で歯列全体への影響が少なく、患者さんが補綴的な対応を望む場合には、無理に外科的処置を行わずに定期的に状態を確認しながら対応を検討していきます。
外科的脱臼
外科的脱臼とは、局所麻酔下でアンキローシスを起こした歯に外科的な器具を使って意図的に強い力を加え、歯根と骨の癒着を機械的に断ち切る処置です。
癒着が解除されることで歯根膜の再生が促され、矯正力によって歯が動くようになることがあります。
ただし、歯根の形態や癒着の範囲によっては歯根の破折リスクも伴うため、慎重な選択が必要です。
抜歯
アンキローシスが重度で外科的脱臼によっても解決が望めない場合や、歯根の吸収が著しく歯の保存が困難な場合は、抜歯を選択することがあります。
抜歯後のスペース管理と最終的な欠損補綴(インプラント・ブリッジ・矯正治療でのスペース閉鎖など)について、矯正治療と並行して計画を立てることが重要です。
矯正的挺出
アンキローシスが部分的・局所的であり、完全に骨と融合しているわけではないと判断される場合に、矯正力によって歯を引き出す処置が行われることがあります。
アンキローシスがある歯への矯正力の適用は、歯根吸収や歯根破折のリスクを伴うため、力の大きさと方向を慎重にコントロールする必要があります。
補綴的アプローチ
沈下した乳歯や動かせない歯に対して、矯正治療で位置を変えることを諦め、かぶせ物やコンポジットレジンによる形態修正で歯列の見た目を整える選択肢もあります。
これは根本的な解決ではありませんが、侵襲を抑えながら審美的・機能的な改善を図る選択肢です。
まとめ
アンキローシス(骨性癒着)とは、歯の根と骨の間にある歯根膜という組織が失われてしまい、歯と骨が直接くっついてしまった状態です。
歯根膜は歯が動くためのクッションのような役割を果たしているため、ここが失われると矯正治療で力を加えても歯が動かなくなります。
歯をぶつけた際の外傷や、乳歯がいつまでも残っている場合、あるいは歯の移植や再植、長い間続いている炎症など、さまざまなきっかけによって引き起こされます。
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